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裁判員候補者の連絡
11月頃に見慣れない小さな封筒が郵便で届いた。
A4の半分くらいの大きさの封筒だったがやけに厚みがある。
封筒の上には「大切なおしらせです。必ず、ご開封ください。」「親展」といった文字が赤く印刷されている。
そして何より差出人として「最高裁判所」の文字が。その横には「裁判員制度」とも。
それを見て裁判員制度というものを思い出した。
裁判員制度ってまだやってたのかな?選ばれたのかな?と思いながら封筒を明けると何枚かの書類と「よくわかる!裁判員制度Q&A」という冊子が入っていた。
書類を見るとどうも来年1年間、裁判員候補者の名簿に載ることになったという知らせだった。
特にすぐに何かをするわけでもないようなのでとりあえずは放っておくことにした。
ちなみに分厚い冊子は裁判員制度について漫画で説明する内容でした。
漫画にしているのは取っつきにくい裁判員制度について少しでも取っつきやすくするためなのかもしれない。
結局、その時はまだ現実感もなくその漫画冊子さえも見ずにその封筒は本棚にしまわれた。
妻に封筒のことを話すと妻からは「もし選ばれたらどこの裁判所へ行くの?」と聞かれたが、そんなことまではよくわからない。何せあまり現実感がないので遠い世界の話しだと思っているから。
最高裁判所から来ているから最高裁判所でやるんじゃない?などと適当なことを言って夫婦ともにこの話題は終わりとなった。 -
裁判所からの封筒
裁判所の封筒のことはすっかり忘れていたある日、仕事から帰ると大きな水色の封筒が届いていた。
封筒には大きく地方裁判所の名前が入っており、それを見た瞬間、そう言えばっという感じで裁判員候補者になっていたことを思い出した。
え~ぇ、マジかぁ・・・と思いながら封筒を開けると今度は前回と比較にならないほど多くの書類が入っていました。
書類は裁判員制度を説明する冊子(これは漫画ではありませんでした)や裁判員選任の日の留意事項等が書かれた冊子、他にも今後の予定の日程、会社の雇用主・上司への協力をお願いするチラシまで入っていました。
裁判員選任の日の留意事項が書かれた冊子には小さなお子さんや介護が必要な家族がいる候補者の方へのお知らせや当日の旅費と日当の説明も記載されていました。
そして質問票も入っており期日までに回答を記載して裁判所へ郵送する必要があるとのことでした。
質問票の内容としては裁判員として参加できるか?出来ないのであればその理由は?といったものでした。
裁判員には司法関係者や自衛官の方はなることが出来ず、又、70歳以上の方や仕事がどうしても休めない方、妊娠中や出産したばかりの方は辞退できるようです。
この時点で辞退できれば楽だろうなと思いつつ、特に不参加となる理由もないため参加できる旨の回答を郵送で裁判所へ提出しました。
又、質問票の説明には虚偽の記載をして裁判所に提出した場合には50万円以下の罰金又は30万円以下の過料に処せられることがあるとの注意書きもついていました。
その注意書きを見て「罰金と過料って何が違うんだろう?」「法律用語は難しいなぁ」と思いながらもし裁判員に選ばれたら・・・と思うと少し憂鬱になっていました。
(ちなみに罰金は刑罰となり刑法や刑事訴訟法が適用されて前科も付くらしいですが、過料は行政上の罰則らしく前科は付かないらしいです) -
裁判員選任前
そしていよいよ裁判員選任の日が近づいてきました。
私の場合は選任の日が金曜日となっており、もし裁判員に選ばれた場合、すぐ次の週の月曜日から裁判が始まる日程でした。
そのため裁判員に選ばれれば出社出来ない間の仕事の調整は土曜日の休日の1日しか出来なくなります。
それでは十分な時間が取れないため、念のために選任の日より前に職場に報告しておく必要がありました。
ちなみに今回の裁判では裁判員に選ばれると計5日間は裁判や評議に出席する必要があり、その間は会社を休む必要がありました。
事前にインターネットで調べると裁判員候補者は1つの裁判につき50人くらいは呼ばれるらしく、選ばれる確率は高くない印象でした。
そのため会社には「まぁ、選ばれることは無いとは思うけど・・・」という感じで説明した上で了承を貰いました。
又、このような場合には有休ではなく特別休暇扱いとなったのが助かりました(裁判所への出廷の証明書は必要となりますが)。 -
裁判員選任の日(1/2)
裁判員選任の日、裁判所へは車で行きました。
留意事項が書かれた冊子には当日は①裁判員の選任手続き期日のお知らせと②印鑑(シャチハタはダメ)は必ず持参するように書いてあったので忘れずに家を出ました。
初めて行く裁判所に緊張しながら裁判所の来客用の駐車場に車を停めました(封筒の中には駐車場の場所が分かるチラシも入っていたので迷わず停めることが出来ました)。
この日は9:30までに裁判所内の指定の部屋に行く必要があったのですが駐車場から見ると誰も裁判所内に入っていく人はおらず10分ほど車の中で時間をつぶしました。
10分ぐらいするとポツポツと人が建物へ入って行くのが見えたので、私も入ることにしました。
人生初めての裁判所です。
緊張しながら建物に入ると入ってすぐの所が検査場となっており、3人の警備員の方が荷物検査と金属探知器による検査を行っていました。
無事に検査を抜けてエレベーターで候補者が集合する階へ行きました。
エレベーターを降りると裁判員候補者用の受付けが有り、4,5人の職員の方が候補者の確認や受付番号を配っていました。
私も受付を済ませ受付番号をもらうと待合室へ案内されました。
待合室には番号の振られた机と椅子が等間隔で並んでおり全部で30人くらいが収容できる部屋でした。
私は早い方だったためそこにはまだ10人も居ないくらいでしたが徐々に席は埋まっていきました。
後で職員の方から説明がありましたが待合室はこの部屋だけではなく法廷も待合室に使っているそうです。
そのため後から来た人たちは法廷の方へ案内されたようです。
結局、この日候補者として裁判所へ来たのは約40人くらいだと思います。 -
裁判員選任の日(2/2)
この中から裁判員6人と補充裁判員2人を選らぶことになるので確率としては1/5くらいだったかと思います。
各机の上にはファイルが置いてあり、そのファイルの中には対象となる裁判の内容とアンケート用紙が入っていました。
裁判の内容には実際の被害者と被告人の名前やどんな事件だったかが記載されており、アンケート用紙にはこの事件の関係者かどうか?裁判員を辞退しないか?等の質問が記載されていました。
アンケートに記入して少しすると大きなモニターに裁判員制度についての説明のビデオが流れたのでそれを見て時間をつぶしました。
そうしていると待合室に何人もの人が入ってきて我々の前に立ちました。
その方達が順番に挨拶をされて今回の裁判の裁判官(計3名)、検察官(計2名)、弁護士(計2名)の方達とわかりました。
その後、裁判官の方達は別室に移動されました。
次に候補者の中で辞退を希望された方等が順番にその部屋に呼ばれて面談を受けていました。
全ての面談が終わるまで約1時間くらいかかりましたがその間は席でスマホをいじっていました(周りもだいたいスマホをいじっていた感じです)。
面談が終わった後、いよいよ裁判員の選出となります。
インターネットで見ると選出はコンピューターがランダムに受付番号を選出するとのことでした。
待合室の大きなモニターに順番に裁判員に選出された受付番号が若い番号から順々に表示されていきます。
私は比較的若い番号でしたので最初の方に表示されました。
待合室では安堵(?)、残念(?)な声や息遣いが聞こえました。
こうして選出された私は他の選出された方達と一緒に別の階の会議室へ案内されました。 -
裁判員選任後(1/2)
選ばれた人たちは廊下に並び、職員の方に誘導されて別の階の会議室へ行きました。
その会議室には先ほど挨拶された裁判官、検察官、弁護士の方々が居られました。
我々の座る机には資料が置いてあり指定された机に全員が座りました。
すると裁判官の方から挨拶と裁判に関する簡単な説明が有り、その後、手元の資料に有った宣誓書を皆で朗読しました。
裁判官の方は3人居られましたが皆さん腰が低く、緊張気味の我々を和ませようと一生懸命なのは強く感じました。
全員による宣誓書の朗読が終わると検察官、弁護士の方々は会議室から出ていきました。
そして裁判官から色々と細かい説明を受けました。
まずは今回の事件の概要について説明が有り、そして裁判とはどのようなものか?という基本的な説明が有りました。
裁判とは被告が犯罪を犯したのかどうか?犯したのであればどのような懲役とするか?について決める事とのことでした。
又、法律知識についてはその都度、裁判官の方がフォローしてくれるとのことでした。
次に裁判に参加している間の食事についての説明がありました。
食事については外食は認められないとのことでした。
理由としては裁判所の外に食事に行って裁判に参加している事件関係者と接触することを防ぐためtのお説明がありました。
そのため食事はお弁当を持参するか、裁判所で頼んでいるお弁当屋さんに注文するしか無いとのことでした。
ちなみに注文した場合のお弁当代は500円ぐらいでした。
続いてトイレの説明があり、トイレも法廷とは別の階のトイレを使うように言われました。
これについても事件関係者との接触を防ぐためとのことでした。
一通りの説明が終わった後に皆で法廷へ見学に行きました。
通常、裁判官が入ってくる裁判官の席の後ろのドアから入りました。
そこは一段高くなっており傍聴席と向かい合う形となるため法廷全体がよく見渡せました。
傍聴席とは逆側から見るため法廷の職員の方の机の裏もよく見えるのですが、傍聴席から見えない所は結構煩雑(セロハンテープやマスクの箱があったりPCの機器があったり)な感じでした(当然、必要なものしか置いてはありませんでしたが)。 -
裁判員選任後(2/2)
長机に椅子が置いてありアクリルで1人1人のスペースを区切ってありました。
裁判員として座る椅子の場所は最初の受付番号の順で決まっており、実際に座ると座り心地は良かったです。
長机にはモニターも有り(数は2人で1つでした)、場合によっては裁判の証拠などが映されるとのことです。
又、机の上には固定のマイクと筆記用具、付箋が置いてありました。
付箋は裁判官へメッセージ(トイレに行きたい等)を伝える際に使うためのものとのことでした。
法廷の中は天井も高く、明るく綺麗な感じでした。
又、傍聴席の数も多く全体が広く感じました。
3人の裁判官が並んで座り、その両側に3人づつ裁判員が座る配置となります。
補助員はそれらの後ろの両側に各1人座る配置です。
最後にカッコ良い座り方を皆で練習しました。
カッコ良い座り方とは・・・法廷に入る際はまずは裁判官2人が入り続いて裁判員、最後に裁判官1人の順で入廷します。
先行する裁判官2人の後ろで裁判員は席が端の方から入って行けるようにあらかじめ扉の前でその順に並びます。
最後の裁判官1人が入って席の前に立ったら皆で一礼してから席に座ります。
このタイミングを2位、練習しました。
尚、退出時には準備が出来た人からバラバラに入ってきた扉から出ていくようになります。
その日はこれで終了となりました。
終始、裁判官の方々は丁寧で腰が低かったのが印象的でした。
帰り際に明日からの駐車場の位置も聞いて帰りました(駐車場は職員の所を使うとのこと)
ちゃんと明日のお弁当の予約もしました。
その日に持って帰ったものは4つです。
1)A4サイズの日程表(裁判の日程が書かれています)
2)メンタルヘルスの連絡先
3)緊急連絡方法
4)入庁証明書(これがあれば入館時に金属探知機を検査が不要になります) -
裁判員1日目(1/3)
いよいよ5日間にわたる裁判の始まりです。
9:30までに裁判所に入れば良いのですが8:50分には裁判所に着いてしまい駐車場の車の中で待ちました。
9:10になったので裁判所へ入ることにしました。
裁判所の入口では昨日配布された入庁証明書を見せればすんなり入れます。
入口の警備員の方に入館証を颯爽と見せて入ろうとしたのですが入館証が裏返しだったようで警備員さんから「表側を見せてください」と冷静に突っ込まれ恥ずかしかったです。
エレベーターで指定された階に行くとエレベーターを降りてすぐに職員の方がおられ丁寧な口調で名前を確認された後に待合室へ案内頂きました。
待合室に行くと既に3人の方が机に座っていました。
机は部屋に楕円形になるように配置されお互いが向き合う形でした。
そして私の席に案内して頂き時間まで座って待ちました。
待っている間に他の裁判員の方も来られ全員が揃いました。
すると職員の方が「何かありましたら何でも言ってください」と緊張気味の我々に向かって優しく行ってくださいました。
時間になると先日の3人の裁判官の方も来られそれぞれの席に座りました。
裁判官の方々はそれぞれ裁判員の間に席が設けられており裁判員の間に均等に座られました。
そして簡単な挨拶と本日の予定を裁判長が説明しました。
各席にはバインダーに綴じられた資料にはタイムスケジュールも有り、そこには分単位での予定表も有りました。
その予定表が短くて2分だったり3分だったりする項目も有って「こんなにタイトなスケジュールなんだ」と驚きました。
説明が終わり簡単な雑談をしていると内線が鳴りいよいよ法廷へ行くことになりました。
裁判官の方々は黒い法衣を着はじめまいした。
法衣を着る姿は格好良く、ハリーポッターを想像してしまいました。
先日習った恰好良い入り方で法廷に入ると既に検察官2人、弁護士2人、被告人が揃っており厳粛な雰囲気を感じました。
私もいよいよこれから裁判だと思うと身が引き締まる思いがしました。 -
裁判員1日目(2/3)
まずは検察官、弁護人による冒頭陳述から始まりました。
通常の刑事事件では冒頭陳述は検察官のみの場合が多いそうなのですが、裁判員裁判の場合は弁護人も冒頭陳述をするそうです。
理由としては裁判の経験の無い裁判員が検察官の主張に一方的に取りこまれないように弁護人からも裁判の説明をするとのことでした。
この際に裁判に関する資料が検察官と弁護人から配布されます(法廷に入ってきたときには既に机の上に置いてありました)。
検察官と弁護人ともに2人居るうちの若い方がそれぞれ資料に基づいて説明をされました。
検察官の説明は分かりやすかったのですが、弁護人の方は資料の説明があちこちに飛ぶのでそれを探すのが大変でちょっと分かり辛い印象でした。
弁護人は2人居ましたが裁判中はほぼこの若い弁護人が主体となって弁護していました。
ただこの若い弁護人は先ほどの冒頭陳述でも感じたのですが弁護士としてはちょっと不安な所もありました。
その後、証人質問へと移っていったのですが、この若い弁護人は時間をあまり気にせずに自分のペースで進め決められた時間をオーバーすることがよく有りました。
これに対して裁判官から注意を受けても「そんなに怒らないでくださいよ」と言っていたのにはビックリしました。
また度重なる時間オーバーに年配の方の検察官からも「検察側は時間を見て必要に応じて質問を省略している。弁護側も考えて欲しい」と指摘されそれに裁判長が再度注意してもどこ吹く風な感じでした。
これが弁護人の作戦なのか?とも思いましたがその後のやり取り等を見ているとただ単に時間配分を特に考えていないように見えました。
このようなやり取りはテレビのニュースでは当然分からず、生の裁判を感じることが出来ました。
途中途中で休憩が挟まれ我々裁判員は一旦、控室へ裁判官と一緒に下がるのですが待合室では裁判長がしきりに時間通りに進んでいないことを謝っていました。
検察側と弁護側からあらかじめ時間の申請を受けてそれを元にタイムスケジュールを作成するらしいのですが、今回は弁護側が酷いと。。。
あまりの時間の超過に弁護人の質問の途中で裁判長から「時間を過ぎています」と注意を受けても「しょうがないですよ、前もってこうなりそうなことは言っておいたじゃないですか」と反論していました。
ようやくお昼になりお弁当の時間です。
お弁当は520円の割には美味しくボリュームの十分でした。
お茶は冷蔵庫に入っており控室にいる間は飲み放題ですがあまり飲んでいる人は居ませんでした。
ネットの情報では裁判員のためにお菓子もいっぱい用意されていると書いてあったのですが、私の場合は各裁判員の机の上に飴が2個あっただけでした。
(あってもあまり皆食べないから?)
昼ごはんはコロナ対策で2つの部屋に分かれて食べました。
他の裁判員の方とはなかなか話す機会が無かったのですがこの食事の時間は裁判官の方も含めてプライベートの話とかも出来ました。
裁判員の服装については8人の内、6人はラフな服装で私を含めた2人はスーツでした。
裁判員の選任後に裁判官からはラフな服装で良いとは言われていたのですが個人的には裁判という人の人生を左右する場にラフな格好は抵抗があったのでスーツにしました。
昼食後は休憩時間なのですが休憩時間を利用して裁判官の方から刑罰とは何か?や刑務所の紹介等が有り休憩時間はそのような時間に当てられました。